チャージ式のカードに現金飲まれたの2回目だぜ
「おい、ナナコ…何か言えよ、クソ、ちくしょう…ちくしょー!」
-am8:30-
「おめえさん、うちのブツに手出すときはそのうすぎたねぇ財布をパンパンにしておくか、このカードを首からさげておくんだな」
このコンビニに来たのは初めてじゃないが、この初老の店員と話すのはおそらく初めてだった。
「なんだおめえさん、このカードをしらねぇのか?こいつはナナコカードっつって、
この店で買い物をする時にこいつをレジの野郎に渡す。そうするとごっそりポイントをつけておめえさんにこのカードを返す。わかるな?こいつは手品じゃなく魔法だ。おっと、他には言わないでくれよ?」
つまり…買い物をする度にポイントがつくってことか?俺は聞いた。
「ヨゥメン、おっさんの言うことが全部真実なら、俺は今日にでもベンツに乗れるってことで間違いはねぇよな?」
「もちろんさ、おめえさんが本物ならな」
なんてこった!こいつはついてるぜ!
俺はポーカーフェイスだが、内心、ぶっ飛びそうでたまらなかった。
しかし、疑問も残った。
「ブラザー、俺は本物に違いないが、なぜそのカードを俺に?」
ほかに上客なんてごちゃまんといる中、なんで俺が選ばれたのかわからなかった。
その時、店員は顔を真っ赤にしユニフォームをめくりあげ、腹に掘られたSEVENの文字を見せつけこう続けた。
「damm!この俺を疑っているのか!?このクソ野郎!俺はおめぇのお袋がまだ乳母車に乗ってるときからこいつで食ってるんだぜ!おめぇみてえなワックな新米にナメられる筋合いなんかねえんだよ、ぶちこまれてえのか!」
俺は不意打ちをくらい、ひるんだ。
「ま、まってくれよ、その、すまなかった、そんなつもりじゃなかったんだ」
「じゃどういうつもりだ?おめえさん、なにか勘違いしてねぇか?つべこべ聞く前に、やるべきことをやれ、それが本物じゃねぇのか?」
そうだ、俺はトミイエ塗装だ。
俺が本物かどうかなんて、俺が一番わかっているはずだし、その証明はここでするべきだ。
「うるせぇこのクソビャッチやろうが、説教なんかいらねぇ、俺が欲しいのはそのカードだ、わかったんならさっさとひざまずいて俺にそいつをよこせ」
「おっと、いっちょまえなこと言いやがるぜ、使い方もしらねぇくせに…」
俺は店員が言い終わる前にそのカードを奪い、プロテインバーをレジに差し出した。
「へっ、やるじゃねぇかクソガキ、それでこそ男だ。お会計162円…ふん、まずまずの数字だ。」
言ってろ、今から俺が出す札束を見たこいつは犬みたいに言うことを聞くようになるだろう。
「5000円でどうだ。」
「damm!おめえさんまじで本物だったのかよ!こいつは驚いたぜ!!」
完全に俺にビビったこいつは会計をすまし、5000円をレジをしまった。
そしてカードを俺に返してきた。
「疑って悪かったな、ありがとよ、久々に本物に出会えて嬉しかったぜ。」
俺たちはハグをし、俺はその場を去ろうとした…いや待てよ、おつりがまだだ。
「おい、待てよ、俺の金は?おつりがまだだぜ」
店員はニヤニヤしながら言った。
「whats?おめえさん寝ぼけてるのか?こいつはチャージタイプだぜ?」
俺は目の前が真っ白になった。チャージ…?ってことは俺の金は帰ってこないってことか?
目眩で倒れそうになるのをこらえながら、太陽が沈みかけている外へ飛び出した。
「ありがとうございましたー!またいつでも来てくれよ!お客様ー!」
俺を馬鹿にした金切り声をあげる店員を後に、俺は足を引きずりながら車に飛び乗った。
「おい、なんだよ…なんでだよ…ナナコ…俺の金…返してくれよ、そいつは今日の経費なんだよ…」
俺は、座席に隠してあった缶スプレーを握った。
「大丈夫、大丈夫さ、俺はトミイエ塗装、いつだってうまく乗り切れるさ」
なぁ、神様っていると思うか?
どっちでもいいけど、いるんならそいつは相当意地の悪い野郎に決まってる。
「そうだ、今日もうまく乗り切れたら、このプロテインバーを食べよう、今日のご褒美だ」
俺は握っていた缶スプレーをこめかみにあて、トリガーを引いた。
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